V.結  び                                           
          
                                                                          
        以上のような改革を実現させれば、我が国の市場は、制度面において、欧
      米と比べて遜色の無いものとなる。しかし、制度や監督の仕組みの改革のみ
      によって、証券市場が活性化し、我が国経済自体の活力維持に貢献するとい
      う、究極の目的の達成が保証されるわけではない。以下のような点について
      の取組みいかんが、我が国市場の在り方を最終的には決定付けると考えられ
      る。                                                                    
                                                                          
        一つは民商法等の基本法制の問題であり、我が国の伝統的な価値観や社会
      の有り様とも調和を図りつつ、いかに国際的な取引慣行等に見合った形でこ
      れを整備し得るかという点である。これについては、我が国と似た法体系を
      持つドイツやフランスにおける市場活性化のための最近の法制度の整備状況
      も参考としつつ、整備を図っていくことが必要である。また、透明・明確な
      ルールの整備とその迅速かつ厳格な適用が行われるためには、司法面での受
      け皿が充実されていくことが望まれる。                                  
                                                                          
        今一つには、市場の効率化と市場としての国際競争力維持の観点からの証
      券税制の在り方の問題である。市場にとって望ましい税制についての本報告
      の提言をも踏まえ、税制調査会等の場において早急に検討が行われることを
      期待する。                                                          
                                                                          
        しかしながら、市場の再生において最も基本的なことは、我が国の仲介者、
      企業、投資家が新たに獲得した自由をどう活用するかである。自由で効率的
      な市場の枠組みが真の活性化をもたらすかどうかは、最終的には、市場参加
      者の行動にかかっている。改革後の証券市場の枠組みの中で、仲介者がダイ
      ナミズムと創意工夫を発揮し、証券市場の中核として活躍することが期待さ
      れる。また、自由には規律と責任が伴う。すべての市場参加者が自由を最大
      限に活用し、主体性と高い倫理観に裏打ちされた規律をもって行動すること
      が望まれる。                                                        
                                                                          
        証券取引審議会としては、我々国民のこうした能力と意識を信じたい。今
      後、改革の具体化を図っていく過程において検討すべき細目も残されてはい
      るが、引き続き広く国民の意見を反映した上で、行政において制度整備を早
      急に行うことを要請する。これにより、我が国証券市場の発展の基盤が整い、
      公正で活力のみなぎる経済社会を創造していく礎が築かれることを期待した  
      い。                                                                  
                                                                          
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